針ピクミンは救えない

 針ピクミンは救えない

 ただのエルフ

 私はキャプテン・オリマー。

 この航海日誌にはPNF-404で出会った不思議な生物ピクミンの中でも特に変わったピクミンのレポートを書いている。


 出会った経緯は惑星の探索中にいきなり目の前に現れた。

 私は原生生物の一種と思い、警戒をしたが向こうは一切敵意を見せずこちらを観察しているだけだった。

 容姿を確認するとピクミンと似た風貌をしており、目は大きく角膜は黒く瞳孔は白い。

 体色は空色のように鮮やかな色合いをしており、片手には針を所有していた。

 針は手に直接持っており、材質は不明。

 針に注視しようとして手荒な行為だが奪おうとしたが握っていないのに手から離れなかった。

 だが後に針ピクミンが針を別の手に持ち替えていたため器官ではなく所有物であることが判明した。

 まるで針自身が離れるのを拒んでいるようだ。

 私はこの新種を針ピクミンと名付けた。


 針ピクミンの個体数を増やそうと針ピクミンにペレットを持たせてみたがペレットを持ち上げることが出来なかった。

 観察してみると片手でペレットを持ち上げようとしていたのだ。

私はもう片方の手に持っている針をどうするか見てみたがひたすら愚直に持ち上げようとしている姿を見て、針ピクミンは運搬には向かない個体と判断した。

 その後赤ピクミンに手伝わせようと一匹投入したら、信じられない光景を見た。

 赤ピクミンが針ピクミンを殴り飛ばし、一人でペレットを運んだのである。

 ピクミンは種が違えど協力する生物だと思っていたので私は驚愕したのである。

 

 針ピクミンの特徴はやはり針の存在である。

 私は針ピクミンの針は戦闘で活躍すると判断して戦闘能力を確かめるべくベニデメマダラモドキ(コチャッピー)と戦わせてみた。

 結果を出すと……戦闘を放棄して隊列に戻ってきた。

 悲しい結果に落胆して、目の前のベニデメマダラモドキを他のピクミンで討伐をしたら針ピクミンは涙を流し遺骸にお辞儀をしたのである。

 まさかピクミンが落涙するとは思っていなかったがその瞬間他のピクミンが針ピクミンに殴りかかったのである。

 ひょっとして針ピクミンは他のピクミンから嫌われてるのでは?とピクミンの社会性能力を考えつつも仲裁をした。


 次に考えたのは土壁の破壊である。

 物質を破壊するのに針を装備していると想定し、土壁の破壊を命じてみた。

 確かに針で土壁を破壊しているが他のピクミンに比べて進捗が明らかに遅い。

 挙句他のピクミンに邪魔だと判断されたのか、追い出され後ろで見守っていた。


 針ピクミンに大地のエキスを与えてみると、どういうわけかエキスが光の粒子となり消え去ったのである。

 不思議に思い観察をすると、他の花が咲いていないピクミンに手を当てて開花をさせていた。

 理屈は不明だが針ピクミンは大地のエキスを自身に貯めこみ、分け与える能力があることが判明した。


 青ピクミンは他のピクミンが水中で溺れていると、救助をする特徴がある。

 私は溺れているピクミンを救助しようと青ピクミンを送ったのだが、なんと針ピクミンも溺れているピクミンを助けようと自ら水中に飛び込んだのである。

 結果は針ピクミンも溺れた。

 青ピクミンは助けようともせずひたすら無視をしていて、針ピクミンは自力で岸までたどり着いた。

 針ピクミンは以外にタフなのではと新たな疑問が生まれた瞬間である。


 水中にあるオタカラの為にピクミンに解散を命じ、青ピクミンだけを連れて水中へと向かった。

 オタカラを入手し、隊列を回収しようとしたら針ピクミンの姿が見えなかった。

 どうやら残されたピクミンたちが追放したそうである。

 私自身も針ピクミンの能力に疑問を抱いていたがさすがに追放は可哀そうだと思い針ピクミンを探し、隊列に入れた。


 針ピクミンは固有のオニヨンを持っておらず他のオニヨンに共生している。

 夕方になりピクミンがオニヨンに入る際、他種のピクミンが謎の動きをした後、うなだれたピクミンのオニヨンに針ピクミンが入るのを確認した。


 針ピクミンはとんでもないことをしてくれた。

 不意に遭遇したクマデメマダラ(クマチャッピー)に私たちは立ち向かい、ゲキニガスプレーを使用して犠牲を出さずに倒せそうと確信をしたら後ろに待機していた針ピクミンがクマデメマダラに大地のエキスを分け与え、回復させたのである。

 私は取り乱してしまい、結果ピクミンたちに多大な犠牲を出してしまった。

 そのとき針ピクミンは普段とは聞いたことのない鳴き声を出していた。


 『カレワイッポーテキニナグラレタカラセートーボーエー』

 『ピクミンガピクミンノミカタダトワオモッテイナインダ』

 『クマサンヲマモリタカッタ』


 私はピクミンと喋る能力は無いが支離滅裂な主張をしていそうなのは分かった。

 こうして私は針ピクミンを追放したのである。

 

 振り返ってみるとアレは本当にピクミンだったのだろうか?

 ピクミン以下の非力と同種からの排斥、敵性生物に援護とピクミンらしくはない行動が目立つ。

 そもそもオニヨンやポンガシグサも発見されず同種も遭遇しなかった。

 ただ唯一確信していることがある。


 『針ピクミンは救えない』

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